公開日 2025年6月20日
上映時間 115分
監督 ダニー・ボイル
脚本 アレックス・ガーランド
キャスト アーロン・テイラー=ジョンソン ジョディ・カマー レイフ・ファインズ アルフィー・ウィリアムズ ジャック・オコンネル
感染から28日後、28週後——。
公式サイトより抜粋
急速に広がった未曾有のパンデミックにより、文明は崩壊。
<感染者>は人間性を無くし、人間ではないものに変わり果てた。
感染を逃れた<人間たち>は、ウイルスが蔓延した本土から離れ、孤島に身を潜めている。
本土と島をつなぐ一本の土手道は干潮時しか現れない。
対岸にいる感染者たちから身を守るため、島の住民は厳しいルールに従って暮らしているが
ある“極秘任務”を実行するために、ジェイミーと息子のスパイクは禁断の地に足を踏み入れていく。
そこで彼らが目にしたものは——。
debuwo評価 85点
おすすめ度 ★★★★(星4)
“癒えなかった28年”
『28日後…』『28週後…』に続く本作は、レイジウイルス発生から28年後のイングランドが舞台。
驚くべきは、世界はすでにパンデミックを克服しているという事実。
EU諸国は感染を封じ込め、イングランドだけが徹底的な隔離領域として放置されている。
隔離領域に住んでいる・入った人間は決して領域から出る事が出来ないように常時監視されている。

つまり、世界は回復したが、イングランドだけが時間を止められたまま。
非感染者たちは今もなお、感染者と共にサバイバルを続けている。
本作は時が止まったままのイングランドで生きている現地民たちの物語である。

本作の軸となる“親子の物語”
物語の中心は、ホリー島に暮らす父ジェイミーと息子スパイク、そして病に伏す母アイラ。
この島は実在するイングランド北東部の聖地で、干潮時にしか渡れない地理的特性を持つ。
劇中では2002年のパンデミック以降、島民たちが独自の誓いと訓練制度を築き、
15歳になると感染者を駆除する通過儀礼を課すなど、軍事的とも言える共同体が描かれる。

訓練シーンで流れるYoung Fathersの「Boots」は、
1903年に発表した詩「ブーツ」を
アメリカの俳優テイラー・ホームズが1915年に朗読したものを
曲のサンプリングの一つとして使用している
この詩の内容は
第二次ボーア戦争中の南アフリカで行軍する兵士たちの思考を表現したと言われ
兵士がブーツを上げ下げして行進する様子
そして「戦の兵士に休息はない」という言葉が何度も何度も繰り返される。
単調な内容と語気の圧力が洗脳を思わせ、狂気じみた雰囲気を醸し出す

実在するホリー島と歴史
ホリー島のモデルとなるホーリー島は
現実では聖域と呼ばれる土地だが
8世紀の終わりには修道院がバイキングに襲われたという暗い歴史も持ち
どこか本作とシンパシーを感じる背景がある
また実際にこの島で撮影も行われている。

感染者の“進化”が示す恐怖
本作最大の衝撃は、感染者が単なる“狂暴なゾンビ”ではなく、
生存・繁殖・戦略行動を行う“生存戦略としての進化体”として描かれている点だ。
28週後では感染から5週間で餓死すると言われていたが
進化した彼らはすでに餓死する事は無くなり
20年以上独自の生態で活動し続けている
- 俊足型:従来型。捕食行動や繁殖能力が確認される。例外を除き全裸
- スローロー型:代謝を抑え、群れで行動する“生存特化型”。子供個体も登場
- アルファ型:巨体・知性・交配行動を持つ変異種。感染者の中で“支配者”のような存在
『奴らに感情はない』
ジェイミーはこう語っていたが
戦略を練り、失えば怒り狂い
獲物を飾る習性すらもっており
内心それをわかっていながら否定しているようにも見える

ケルソン博士──常識の彼岸に佇む“慰霊者”
スパイクが接触する元町医者ケルソンは、
死者を弔い、尊厳死を与え、孤独に生きながらも狂っていない人物。
だが彼が築いた“白骨の神殿”や、整然と並べられた死体の数々は、
常識を超えた倫理観の持ち主であることを物語る。
彼の存在は、「この状況下で正気を保っていること自体が異常」
という逆説を突きつけてくる。
モラルを持っているが一部の感覚がぶっ飛んでいるという意味では
イコライザーシリーズのロバート・マッコールさんと同じカテゴリの人かもしれない

髑髏の神殿について
彼が作ったボーン・テンプル(白骨の神殿)は
実際にデザインを手がけたカーソン・マッコール氏によると
ロンドンにある新型コロナの犠牲者を追悼するメモリアルウォールと
大小さまざまな十字架が何千も並んでいるリトアニアの丘からインスピレーションを得たという。

“ジミー”とヒーローの幻影
終盤、スパイクの前に現れる謎の男ジミーとその仲間たち。
彼らの出で立ちはテレタビーズやパワーレンジャーを思わせ、
スパイクが自室にに置き去りにしたパワーレンジャーの人形
つまりは“本作のヒロイズム”の象徴とも見れとれる
感染者をアクロバティックに制圧する彼らの姿は、
絶望の中に現れた“子供の見るヒーロー像”そのものだった。
しかし中盤の吊るされた男に刻まれたジミーと言う名前から
彼らが一枚嚙んでいるのは明らか…
今後の動向が気になる所だ

続編構想と“新たな三部作”の始まり
監督は本作を「続編ではなく、新たな始まり」と語っており、
すでに第2作『28 Years Later: The Bone Temple』の撮影は完了。
なんとキリアン・マーフィ演じるジムが再登場することが明かされている。
- スパイクとジミーの未来、ジェイミーの動向
- ジム、セリーナ、ハンナの“28日後組”の現在
- 感染者の進化と新たなウイルスの可能性
- 感染者から生まれた非感染の赤ん坊の存在
──このシリーズ、まだまだ終わらない。
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