公開日 2023年10月27日
上映時間 91分
監督 ヤルマリ・ヘランダー
脚本 ヤルマリ・ヘランダー
キャスト ヨルマ・トンミラ アクセル・ヘニー ジャック・ドゥーラン ミモサ・ビッラモ オンニ・トンミラ
1944年、ソ連に侵攻されナチスドイツに国土を焼き尽くされたフィンランド。
映画.comより一部引用
老兵アアタミ・コルピは掘り当てた金塊を隠し持ち、愛犬ウッコとともに凍てつく荒野を旅していた。
やがて彼はブルーノ・ヘルドルフ中尉率いるナチスの戦車隊に遭遇し金塊と命を狙われるが
実はアアタミはかつて精鋭部隊の一員として名を馳せた伝説の兵士だった。
アアタミは使い古したツルハシ1本と不屈の精神を武器に、次々と敵を血祭りにあげていく。
debuwo評価 92点
おすすめ度 ★★★★☆(星4)
純度高めのナーメテーター
不屈のフィンランド男が
ナチスに奪われた金塊を何が何でも奪い返す
舞台は1944年のフィンランド、時代背景は複雑だが
ストーリーはシンプルの一言
華美に脚色する事、現代的価値観でブラッシュアップする事
ヒーロー映画やアクション映画でも当たり前に行われている昨今
ここまで真っすぐで骨太な映画も珍しい
ほぼセリフが無い寡黙な主人公アアタミ
全くぼかさないゴア描写の数々
冒頭でアアタミが発掘した金の様に
どれだけ変形し、砕けてもその価値が変わらない
黄金のような純度がこの映画にはある!
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舞台となる1944年ラップランドの情勢
1943年2月ドイツがスターリングラード攻防戦で敗退により
翌年2月ドイツと同盟を組んでいたフィンランドはソ連と和平協定を結ぶことになるが
和平の条件が、9月15日までにドイツ軍20万人を国外に追放する事だった
フィンランドに裏切られたドイツは撤退しながら焦土作戦を決行する
通りすがる街を焼き払い、数百の橋を破壊し、数万発の地雷を埋めて国外に脱出する
アアタミはまさにこの焦土作戦を行うナチに遭遇したのである
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過酷なロケ地 ヌオルガム
本作のロケ地はフィンランド最北の町・ヌオルガム
木々が聳え立ち、雪景色にオーロラというラップランドのイメージとは異なり
強風が常に吹きすさぶ、見通しの良い荒野だ
気温が低い事もさることながら、強風で巻き上がる砂が演者と撮影機材に襲い掛かり
メイキング動画からも過酷な環境での撮影だったことが伺える
もう一人のSISUを持つ男
幼い頃に見たランボーを
フィンランドで作りたかった
80年代を代表するアクション映画に強い影響を受けたと述べるヘランダー監督
彼が少年時代に映画のランボーに心奪われた
誕生日プレゼントに弓矢かスクーターを選べと言われて弓矢を選び
弓矢で遊べる遊びはおよそ全てやったと豪語する
それほどまでにランボーに夢中になった監督は
自分の人生はランボーを見た瞬間に映画を撮る人生に決まったという
それから彼は決してくじけない強い意志で
彼もまさしくフィンランド男の魂「SISU」を
体現するものと言って間違いないだろう
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SISUの語源を考える
フィンランド語でSISUに似た単語は
Sisäelimet=内臓
これを語源と仮定して
決してあきらめない、屈指ない精神性がSISUに近しい意味とするならば
メンタルの強さを表す単語、ガッツ=腸にかなり近い印象を感じる
人間の腹の中には強い感情があると考えるのは
世界共通という事か
80年代アクション映画の影響
前述の通り、本作は80年代アクション映画の遺伝子が強く残っている
アアタミの家族を失う人生、ナチスとのラップランドでの追想劇
虐げられた女性たちの決起と逆襲はマッドマックスを
劇中で負傷し、あり物で自らの肉体を治療していく様
血生臭い戦闘の数々はランボーを想起させ
ラストバトルの舞台に入った瞬間
これでとどめを刺します!という魅せ方は
80年代アクション映画の金字塔「コブラ」の構図と酷似している
![](https://www.eiga-hihyou.com/wp-content/uploads/2023/11/27morris-box8-superJumbo-v2-0-00-00-00-1024x650.jpg)
80年代だけではないリスペクトの数々
また、時代こそ違えど
傑作と呼ばれる作品の演出へのオマージュと思われるシーンも多々あり
筆者のお気に入りは
アアタミがナチとの戦闘の際、煙幕に紛れ
盾で防ぎながら後退するシーンだ
これはMCU映画の中でもアクションシーン評価が高い
キャプテンアメリカ・ウィンターソルジャーを連想せずにはいられない
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音楽も最高!
本作は音楽でアアタミか、ナチスの演出かわかりやすいのも特徴で
Juri Seppä & Tuomas Wäinölä監修によるサントラはファンなら聞いておくべきだろう
ナチが登場する際に流れ、わかりやすくヒール感を醸し出すNazis’ Theme
歪んだギターサウンドが織りなすこの曲のグルーブ感は最高の一言
それと対を為すように主人公アアタミのテーマAatami Leaving Campは
老人の唸り声や、成人女性のコーラスが繁盛に使われており
アアタミが行動を起こすときは老人の唸り声
ナチが行動を起こすときはメタルサウンド
そして互いが相まみえる時、二つの音楽ジャンルのぶつかりあう
音楽面だけでも展開が楽しめる作りとなっている
![](https://www.eiga-hihyou.com/wp-content/uploads/2023/11/Sisu-Nazi-group-shot.jpg)
凄まじいバイオレンスエンタメ
- 監督の人柄
- ラップランドの過酷な撮影環境
- 1940年代のフィンランド
- リスペクト元のアクション映画
- トンミラ氏の愛犬
この映画を語るにおいて気になる要素は多々あるが
その興味の原動力となるのは圧倒的な本編の熱量だろう
数々のバイオレンスと、御年64歳ヨルマ・トンミラ氏の熱量を
まずはその目で確かめて欲しい!
![](https://www.eiga-hihyou.com/wp-content/uploads/2023/10/20230823-00132620-crankinn-000-1-view.jpg)
一大ジャンルナーメテーター
なめてた相手が殺人マシーンだった系映画は
多くのアクションスターで作られたジャンル映画だ
イコライザーでその爽快感の虜になったのなら
それ以外の作品も如何でしょうか?
当ブログでは他のナーメテーターも紹介しているので
次のナーメテーター作品を探しているときは
是非参考にしてください!
記事はこちらからどうぞ!↓
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