公開日 2025年5月16日
上映時間 142分
監督 コラリー・ファルジャ
脚本 コラリー・ファルジャ
キャスト デミ・ムーア マーガレット・クアリー デニス・クエイド エドワード・ハミルトン=クラーク ゴア・エイブラムス オスカー・ルサージュ クリスチャン・エリクソン ロビン・グリア トム・モートン ウーゴ・ディエゴ・ガルシア
元トップ人気女優エリザベスは、50歳を超え、容姿の衰えと
公式サイトより引用
それによる仕事の減少から、ある新しい再生医療<サブスタンス>に手を出した。
接種するや、エリザベスの背を破り脱皮するかの如く現れたのは若く美しい
“エリザベス”の上位互換“スー”。抜群のルックスと、エリザベスの経験を持つ新たなスターの登場に
色めき立つテレビ業界。スーは一足飛びに、スターダムへと駆け上がる。
一つの精神をシェアする存在であるエリザベスとスーは
それぞれの生命とコンディションを維持するために
一週毎に入れ替わらなければならないのだが
スーがタイムシェアリングのルールを破りはじめ―。
debuwo評価 88点
おすすめ度 ★★★★(星4)
美と若さで時代を支配した女優が、自分を破壊する
『サブスタンス』は、美しさとセクシャリティで一時代を築いたデミ・ムーアが
自身の存在を容赦なく解体していく異色のホラー/風刺劇
ジャンルは違えど、スライの『ランボー4』やイーストウッドの『グラン・トリノ』のように
俳優自身のキャリアに対するセルフカウンター作品に見える側面がある。
“アンチエイジング”という、誰もがそっと目を逸らす領域に堂々と切り込んだ作風にまず痺れる。

痛々しくも美しい『美』の映画神話
この作品の印象を一言で言えば
“美しさ・若さへの渇望が暴走した神話の再構築”
失った若さへの羨望やクローン技術に関する欲望など
そこには『永遠に美しく…』『X』『シックス・デイ』『ジェミニマン』
といった作品のニュアンスが詰まっているが、
あえて**“露悪的”に仕上げている**のがポイントで
あの『エイリアン4』あたりのグロセンスを覚悟して観るのが正解。しかしこの映画、グロさを超えて
「うわ、ここまでやる?」っていう悪趣味美術の突き抜け方が見事。
まさに“高品位な悪ふざけ”として成立していて、ある種の清々しさがある。

エリザベスとスー欲望の両面に生きる女
主人公エリザベスと、彼女が生み出した若い自己分身スー。
スーがジムで汗を流し、ファンに囲まれて輝く日常を送る一方、
エリザベスは引きこもり、暴飲暴食と“謎の調理”に身を沈めていく…。

だが、この2人は完全に表裏一体の存在。
スーの華々しい日常も、他者からの一面的な視線(性的な憧れと利用)で構成されており、
エリザベスの料理描写の異様さ(黒焦げの巨大ソーセージなど)は
“欲望の消費”そのものを抽象化した視覚表現になっている。
しかもこの二人、ただ可哀そうな被害者ではない。
その構造を理解した上で、自分たちの“商品価値”を維持しようとする冷静ささえある。

「美」は、壊れるまで手放せない
やがてルールは破られ、7日間交代の契約も、髄液のバランスも崩壊。
エリザベスは衰え、スーは消耗し、互いを潰す方向へと突き進んでいく。
終末用の薬物をスーに打ち込んだ後、
エリザベスは葛藤しつつも投与を踏みとどまる
──が、もう遅い。
崩壊を止めようとスーは禁断のサブスタンスを再投与し
「モンストロ・エリサスー」
が誕生する。

再生・崩壊・記憶・美の呪いが全部のしかかった悲しきモンスターで
再生能力の副作用、エリザベスの記憶と意識が背中に顔として現れるという超異形のデザイン。
ここまで来ると恐怖じゃなくアート。
文字通り「星」となった彼女が、あのラストに何を思っていたのか…。
演じきったデミ・ムーアにとって、間違いなくキャリア最恐の役だろう
意味がある下品とセクシー
本作は美しいものはよりセクシーに
ゴージャスなものはより下劣に描いているのは
もはや言うまでもないが、そこのクォリティが高くなければ
エリザベスが固執する理由にはならない為
半端ないクォリティで描写されている。
セクシーすぎるエアロビ
中盤のエアロビシーンは、
2004年の名MV「Call On Me」ばりの過剰な肉体美演出だが
そこに「エロアロ美の需要はこれだ!」の問う経営者目線の悪趣味さが
これでもかと表現されている
下品全振りのビンス・マクマホン
- 立ち振る舞い
- エビの食い方
- トイレ
- プレゼント
デニス・クエイド演じるハーヴェイの“品のなさ”は笑えるレベル
彼の立ち振る舞いはWWEの経営者であり
一流のショーマンであるビンスマクマホンの
リングやテレビ上の悪徳経営者としてのキャラクター像を
文字通り凝縮したような演技だ
物語の毒として機能していて素晴らしい。
尖った映画のこういう“おふざけと真面目が両立してる瞬間”が筆者はたまらなく好きだ

補足:ルーツとオマージュの元ネタ
モンストロ・エリサスーの登場シーン
YouTubeチャンネル「ブラックホール」サブスタンス回にて
尊敬する高橋ヨシキ氏によれば
ゾルタン★星人の“スーパーホット・ジャイアント・エイリアン”が元ネタとのこと。
映像がいったん止まるところとかそっくり!
こんなところを拾ってくるヨシキさん本当に素晴らしい
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