『敗れざる者』ネタバレ感想・考察|変わらない踊るシリーズと柳葉敏郎の哀愁演技

★★★

公開日  2024年10月11日
上映時間 115分

監督   本広克行
脚本   君塚良一
キャスト 柳葉敏郎 福本莉子 前山くうが 前山こうが 齋藤潤 松下洸平 矢本悠馬 筧利夫 真矢ミキ 甲本雅裕

映画ドットコム様より引用

debuwo評価 48点
おすすめ度  (星3)

“元警視庁室井”という物語

本作『敗れざる者』では、定年前に退職した彼が秋田の山奥で里親として暮らしている。
被害者・加害者双方の家族に寄り添いたいという信念から
人の子供を迎え、静かに日々を送る。しかし、そんな生活にも再び事件が忍び寄る。
良くも悪くも現代社会の“善意”と“リアル”が交差する場所に、室井は身を置いていた。
柳葉敏郎が演じる室井慎次──
その名を聞けば「踊る大捜査線」を思い出す人も多いはず。

彼が踊るシリーズが十数年たった今
いったいどんな生活を送っているのか
それだけで興味が湧く作品なのは間違いない

本作は前後編の2部作で前編にあたる
後編のレビューはこちら↓

演技が物語る室井の人間味─

柳葉さんの演技は圧巻だ。
元警察官としての誠実さ、里親としての不器用さ
一方で地元警官との対応などキャラ弁を作り出すなど
ふとした仕草に見え隠れする茶目っ気も相変わらずだ
「踊る~」でも垣間見えていた天然キャラが、ここでは自然体で描かれている。
自宅での新城との語らい、DIYの失敗で思わず頭を抱え苦悩する姿…
どれも過剰な説明はないが、シリーズを負ったファンには味わいが深い。
ただ、村人との距離感は室井らしからぬ対応だ
そもそも室井は警視庁に在籍していた時は
現場と官僚の垣根を取り払い警察組織改革を目指した人物で
口数こそ少ないが対話路線の人間である
そんな彼が里親として村の人間とコミュニケーションをとらないのは不可解である。

井戸川という“感動ポルノの素材”

妙な描写といえばタカの母を殺した犯人・井戸川との面会。
弁護士の計らいで「反省文を読ませてタカに供述させ裁判に進める」予定だが
室井の独断で同席を拒否。
それによって、物語は予想外の展開を見せるが──井戸川の描き方には疑問も残る。
状況的にはタカに井戸川が反省していると供述させる事で
裁判を有利に進めさせるのが目的なのだが
室井の発言で弁護士は同行できなくなる
弁護士が同席してないとはいえ明らかに井戸川の態度はおかしい
どんだけアホでも判決、人生を左右させる出来事を目の前に
被害者の息子に対してあの傲慢不遜な態度は無理がある

そしてそんな加害者がタカとの面会で
心揺さぶられ反省し、罪を認めたというのだ
タカ君には悪いが彼の話程度で
この手の人間は容易く改心することなどない
裁判が控えてるにもかかわらず
悪辣な態度をとる井戸川という人物像を100歩譲って認めるとして
そんな人間があの程度の事で改心すると思っているのは
余りにもチープである

白石監督の映画凶悪のピエール瀧のように
そういうポーズをとることはあっても
根本的にはそのような感情を持ち合わせていない方が自然である

人物像の偏見やリアリティの欠落した演出

北大仙署の地域課警官・乃木真守。
彼は軽薄でがさつ、空気も読まず事件に浮かれている。
コメディリリーフなのは理解できるが、明らかに“社会人”の振る舞いとしては異常だ。
この誇張された描写には、脚本家の“昭和的な職業観”が滲む。
では打って変わって本庁の人間の描写は良いかといえばそうではない
民家前にヘリで降り立つ警視庁の捜査員。
死体が見つかってから本庁の最新設備での捜査
──その過剰な描写に納得性は薄い。
後編を見据えての伏線なのかもしれないが
現段階では説明も仮の目的すらも提示されない。
捜査員たち自身も状況を理解していないまま動いている描写は
もはや演出ではなく“混乱”でしかない。
それっぽい捜査による雰囲気だけの緊迫感
田舎の住民像、警視庁の捜査官像
脚本家のいかにもな偏見が滲み出ている。

シリーズを通して残る“凝り固まった肖像”

焦点を当てたい人物はある程度株を担保された作りだが
特に敵とされる人物、外野とされる人物
こういう人物はこうなのだという偏見じみた思想
警察の捜査規模など現代としては納得性のない演出
ストーリー構成など粗が目立つ
後半では不満点を回収するような作りであることを願う

おまけ 室井さんの履歴書

里親として有利に進めれるのはどうかとして
履歴書の経歴が強すぎる

コメント