公開日 2023年03月18日
上映時間 121分
監督 庵野秀明
脚本 庵野秀明
原作 石ノ森章太郎
キャスト 池松壮亮 浜辺美波 柄本祐 西野七瀬 塚本晋也 手塚とおる 松尾スズキ
1971年放送開始の特撮テレビドラマ「仮面ライダー」を
映画ドットコム様より引用
「シン・エヴァンゲリオン劇場版」「シン・ゴジラ」の庵野秀明が監督・脚本を手がけて新たに映画化。
主人公・本郷猛/仮面ライダー役に「宮本から君へ」の池松壮亮
ヒロイン・緑川ルリ子役に「賭ケグルイ」シリーズの浜辺美波
一文字隼人/仮面ライダー第2号役に「ハケンアニメ!」の柄本佑を迎え、新たなオリジナル作品として描き出す。
debuwo評価 70点
おすすめ度 ★★★☆☆(星3)
あらすじと作品の位置づけ
緑川博士によってバッタ型オーグ1号に改造された本郷猛が
博士の娘・緑川ルリ子と共に
人工知能アイが組織した悪の組織・SHOCKERを排除する為に戦う
ストーリーは『漫画 仮面ライダー』
映像的な演出は『特撮テレビドラマ 仮面ライダー』を参照し
仮面ライダー生誕50周年を記念して作られた作品のひとつ。
2016年からおよそ7年の期間を経て制作された。
特撮マニアとしても有名な庵野秀明監督曰く
「僕の仮面ライダーを作りたい」ではなく
「仮面ライダーという作品に恩返ししたい」
というモチベーションで手掛けられた作品。
![](https://www.eiga-hihyou.com/wp-content/uploads/2023/03/c68d50c65b1cb6ea0176e9b2ae96348a-1024x492.png)
引用元当て映画
本作は仮面ライダーファンであり特撮オタクでもある庵野秀明の作品だ
原作の漫画仮面ライダーは然る事ながら
仮面ライダーで言えばV3、仮面ライダーサイクロン
他特撮作品からはキカイダー、ロボット刑事K、イナズマンなど多岐にわたる
アニメからも私小説である新世紀エヴァンゲリオンからのセルフパロディなど
引用元を知っている人間であれば、あれは!となり楽しめる作りとなっていて
流行り廃りに重きを置く現代のオタクよりも
引用元についてあれこれと話す90年代以前のクラシックなオタク向けの作品と言える
![](https://www.eiga-hihyou.com/wp-content/uploads/2023/03/コンポ-10-0000000-1024x576.png)
友人のやださんによる引用元に関する記事
![](https://www.eiga-hihyou.com/wp-content/uploads/cocoon-resources/blog-card-cache/061a76346e0728bf56f78f4e92e918de.png)
電子の妖精と生体電算機
本作の数あるオマージュの中でとりわけ異彩を放っていたのが
緑川ルリ子のあだ名『ルリルリ』の引用元だろう
機動戦艦ナデシコの人気キャラクター、ホシノ・ルリ
生体電算機、試験管ベビー、感情の機微が乏しいなど似通った部分が多い
青白く発光する瞳は反転色が金色である点から意図したものだと思われる
※金色はホシノルリの瞳色
劇中で描くパロディやオマージュには何かしらルーツを辿らせることの多い庵野作品で
何故、仮面ライダーとあまり関係のないナデシコを拾ったのか?
実際は特に理由はなさそうだが、他の引用元は繋がりがしっかりしている分
これにも何かあるのではないか?と考察させる塩梅は
90年代以前の作品を思わせるテイストで懐かしさすら感じる
![](https://www.eiga-hihyou.com/wp-content/uploads/2023/03/25697bb673a891a7530a67ec6ee6592d-0-00-00-00.jpg)
『らしさ』と引き換えに失ったヒーロー性
竹野内豊と斎藤工はシン・シリーズ3作に出演し
自衛隊員、官僚、公安などの人間として登場する
今回もストーリーを進行させるのは彼ら政府のエリートたちだ
3作続けて主人公と政府の人間とのやり取りで話が進み
一般市民は殆ど映らず、主人公・政府・敵でストーリーが完結する
ゴジラは現実の自衛隊VSゴジラが戦うというコンセプトで
一般人にスポットライトを当てる暇が無いのは分かる
ウルトラマンはゴジラに対して人の興味を持ったヒーローで
一般人に目を向けないのはどうかと思うものの
ストーリーのスケール上、同様にある程度看過できる
しかし、仮面ライダーは等身大のヒーローだ
ゴジラやウルトラマンと比べれば市井の人たちを助け
触れ合う事もあるはずがそこは全く描かない
やり取りと言えば彼らお得意の専門用語交じりのシニカルなやり取りばかりで
原作の設定や、庵野作品らしさを追求する為に
弱きを助け、強きを挫く姿勢を見失っている
本作のカタルシス不足はヒーロー描写の欠如が大きな要因だろう
この作品のバランス感覚では、それこそ子供の目に留まり憧れるようには思えない
![](https://www.eiga-hihyou.com/wp-content/uploads/2023/03/07c4c741a5428243569d300496a7995d.jpg)
戦闘シーンは一長一短
戦闘シーンに関しては褒めたい部分とそうでない部分がある
殴れば体が破壊され血飛沫が飛び出す暴力描写を
カメラのブレなどで効果的に見せている特撮シーンはとても鮮烈で
旧劇エヴァを彷彿とさせる
クモオーグ戦の殺陣はリスペクト溢れるオマージュで
これがやりたかった!こだわった!というのが伝わってくる
![](https://www.eiga-hihyou.com/wp-content/uploads/2023/03/de96312f6e306189cbce5055fbd159c6-1024x475.jpg)
実際にアクターが演じるシーンはこだわりを持ち妥協せず撮ったのは
ある程度関連作品を知っていれば理解、賞賛できるが
その反面、戴けないのがCGでの戦闘シーンだ
MCUやDC映画など金のかかったハリウッド映画を見慣れており
昨今の視聴者は目が肥えている
あまりにもCGです!と言ったモーションは明らかに浮いている
おまけに終盤のトンネルでの戦闘シーンはあまりにも暗すぎる
エイリアンVSプレデター2のパロディのつもりか!?
と突っ込みたくなるほどくらいとにかく見ずらい
![](https://www.eiga-hihyou.com/wp-content/uploads/2023/03/db061aa829c8b3fc671b7393cd269b39-0000000-1024x926.jpg)
対照的な50周年記念作品
- 世間と隔絶し、官僚や一部の人間だけ描写するシン・仮面ライダー
- 市井で生きる怪人と化した人々と差別を描いたブラックサン
去年Amazonプライムで公開された作品
仮面ライダーブラックサンは同じく50周年記念作品でありながら
対照的なストーリーラインになっているのが面白い
さらに言えば実は音楽面も同じ構図があり
シン・仮面ライダーは『レッツゴー!! ライダーキック』や
『ロンリー仮面ライダー』など原作曲を強く推していたが
ブラックサンはと言えば、『BLACKSUN』や
『Did you see the sunrise?』と言ったオリジナル曲を重宝していた
筆者としては、音楽面だけに関して言えば
新しいテンプレート、ミームを作ったブラックサンにやや軍配が上がる
シン・仮面ライダーは原作曲の使いどころがインパクトがあり過ぎた為に
オリジナル曲が霞んでしまうのだ
![](https://www.eiga-hihyou.com/wp-content/uploads/2023/03/シンと黒い太陽-1024x922.jpg)
演者はとても魅力的
ストーリーライン、終盤の戦闘シーン、ヒーローとしての描写など
苦言を呈する部分はあったものの
演じていた役者さん達はとても魅力的で
柄本祐さんの快活で男らしい一文字隼人
浜辺美波さん演じるルリ子と西野七瀬さんのヒロミの美しさは
アニメキャラの様な魅力があった
今後もシン・シリーズで新作を作る事があるのならば
登場人物の魅力を引き出しつつ
多くの観客が求めるヒーロー像を具現化していくような気概が無ければ
このシリーズは厳しいのかもしれない…!
こだわりを持ちつつ作ってはいるのは一目瞭然だが
作り手のこだわり=面白さではないと痛感した作品でした…!!
![](https://www.eiga-hihyou.com/wp-content/uploads/2023/03/FriVnlMakAAskRH-1024x683.jpg)
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