【エブエブ】エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス【ネタバレあり】

★★★★

公開日  2023年03月18日
上映時間 121分
監督 ダニエル・クワン ダニエル・シャイナート
脚本 ダニエル・クワン ダニエル・シャイナート

キャスト ミシェル・ヨー キー・ホイ・クァン ステファニー・スー ジェームズ・ホン ブライアン・リー アンディ・リー

経営するコインランドリーは破産寸前で
ボケているのに頑固な父親といつまでも反抗期が終わらない娘
優しいだけで頼りにならない夫に囲まれ頭の痛い問題だらけのエヴリン。
いっぱいっぱいの日々を送る彼女の前に
突如として「別の宇宙(ユニバース)から来た」という夫のウェイモンドが現れる。
混乱するエヴリンに「全宇宙にカオスをもたらす強大な悪を倒せるのは君だけだ」
と、驚きの使命を背負わせる別宇宙のウェイモンド。
そんな“別の宇宙の夫”に言われるがまま、ワケも分からずマルチバース(並行世界)に飛び込んだ彼女は
カンフーマスターばりの身体能力を手に入れ、全人類の命運をかけた戦いに身を投じることになる。

映画ドットコム様より引用

debuwo評価 74点
おすすめ度 ★★(星4)

アカデミー賞7部門受賞作品

ミシェル・ヨーが主演で、キー・ホイ・クァンが復帰し
マルチバースとカンフーのミックスした映画が
アカデミー賞を7部門も受賞するといって
数年前の世界では誰が信じただろうか?
嘘みたいな本当の映画
それがエブエブなのだ!

また、アメリカでは推定制作費2500万ドルから興行収入1.35億ドルを叩き出し
最も利益率の高い映画ともされたあらゆる意味で記録的作品

戦闘スタイル『バース・ジャンプ』

別次元の存在から力を借りる戦闘スタイルは
ライアン・レイノルズのフリーガイ、レディ・プレイヤー1や
国内では仮面ライダーディケイドなどを想起させる

今やシリアス、コメディ問わず
バトル物の戦闘スタイルとして確立された戦い方だが
パンフレットなどにあるダニエルズのインタビューによれば
引用元はマトリックスの戦闘データインストールだ
最初に借りる力が、カンフーなのもおそらくは熱いリスペクトなのだろう
『本作は僕たちなりのマトリックスに対する答えだ』と、ダニエル・クワンは豪語している
彼らなりのアレンジで最大の見どころは
バース・ジャンプの発動条件・馬鹿馬鹿しい行動をとるほど高い能力が得られる
そのあまりの奇抜さから当初は呆気にとられるが
どんどんエスカレートするバースジャンプへのアクセス方法は観ていてとてもコミカルで
歴史から学び、自分たちなりのアレンジを絶妙に活かした演出だ

本当にエヴリンは最低の人生なのか?

「君は最低の人生を送ったから何にでもなれる」

アルファバースのウェイモンドからエヴリンにこう告げる
エヴリンはウェイモンドと駆け落ち、移民としてアメリカで
コインランドリーを営み、365日休みのない生活を送っている
痴呆で保守的な父、その保守的な家庭に同性愛者の彼女を連れてくる娘
気は優しいが頼りにならない旦那、そして確定申告
ワープア+複雑な家庭事情におよそ成功者とは言えない日々を送っている
しかしだ
果たして彼女の人生はそれほど最低な人生なのだろうか?
大変な人生なのは間違いないが
人生設計の甘さや父親の教育方針に問題があるのはその通りだ
だが、愛する人と共にアメリカに渡り、子宝に恵まれる
筆者のルサンチマンが混じっているのは否定しないが
そんな彼女が最低と言うのはハードルが低すぎないかと思わざるを得ない
多彩な世界ではもっと大変そうな様相を呈しているエヴリンがいる

オチが難解

流行のマルチバース、そしてバースジャンプのアイデア
面白いアイデアが詰まった作品ではあるが
最終的にエヴリンがどうなったかはまるで分らない
ラストの確定申告の手続きを行っているのは
税務署で暴れなかった世界のエヴリンにしか見えず
もしあれが主人公エヴリンであるならば
ジョブ・トゥパキとエヴリンの戦いに巻き込まれる形で
人死にも起きているというのに、普通に確定申告を再申請しているとすれば
かなり雑な描写と言わざるを得ない
主人公のエヴリンがどうなったか?ベーグルから抜け出したトゥパキは?
この顛末はもう少し明確に明示して欲しかった

温かさに満ちた作品

  • 心優しきウェイモンドの生き方
  • 彼の生き方を学び真に覚醒するエヴリン
  • 覚醒したエヴリンに救われる娘と人々

傷つけて勝つのではなく、与えて癒す事で無力化していくエヴリン
彼女の大立ち回りは、非常にエモーショナルだったし
ニヒリズムに目覚めた娘に向き合った姿もとても感動的だった
細かい所を突っ込もうとすれば、それこそツッコみ所のある作品であるが
それを補って余りある素晴らしいシーン、楽しく笑えるシーンが多数あるのは間違いない
現代的な価値観から考えて、あらゆる人にお勧めできる作品だろう

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