スーパースターの定義を変えた男の伝記映画『Michael/マイケル』

★★★★★

公開日  2026年6月12日
上映時間 127分

監督   アントワーン・フークア
脚本   ジョン・ローガン
キャスト ジャファー・ジャクソン ジュリアーノ・ヴァルディ コールマン・ドミンゴ ニア・ロング マイルズ・テラー ローラ・ハリアー

公式サイトより抜粋

debuwo評価 92点
おすすめ度  ★★(星5)

彼がマイケルとなるまでを描いた誕生譚

本作はマイケル・ジャクソンが
1960年代から1980年代後半までに起こったことを描いた伝記映画で
マイケル少年がジャクソン5のボーカルとしてデビューし
父との確執からの独立、自分のアーディストとしての使命を見出し
【ジャクソンファミリーのマイケル・ジャクソン】から
【唯一のスター・マイケル】へと成長する過程を描く
音楽面ではジェファーが迫真の演技で見せるライブシーンは
圧巻の一言でエンタメ性もアーティスト伝記映画の中でも
頭一つ抜けていると言っていい
マイケル・ジャクソンという
【KING OF POP】の入門に
相応しい傑作である。

また、ポップミュージック・ショービズの歴史において
彼がいかに重要な人物かも映画いた音楽近代史でもある。

好き嫌いはあれど誰しも認める存在、故に彼はKING

マイケルという存在の偉大さ

90年代で思春期を迎えた筆者にとっては
テレビ=正義な当時のメディアに完全に洗脳されたようなもので
少なくとも日本のお茶の間では
パロディの定番ネタとなっており嘲笑の対象とされていた
数々の傑作MVは整形ネタを混ぜたパロディが作られ
挙句の果てには頭の火傷すら茶化される始末…
2026年現在では彼の公式ページにあるMVの再生数が
彼の存在がどういったものか物語っている

再生数がKINGすぎる

ジャファー・ジャクソンの熱演

まず本作でマイケルを熱演したジャファー・ジャクソン
マイケルの兄ジャーメイン・ジャクソンの息子
つまりはマイケルの親族にあたる青年。
2年に渡る準備期間・役作りで演じられた彼のマイケルは圧巻だった
決して顔つきがそっくりという訳でも、身長などが同じという訳でもない
筆者は彼が演じると目にした時には
実際の親族を起用した話題作りだろうとすら邪推していた

だが本編を鑑賞すればどうだ
2年間のハードなトレーニングにより
キレキレのダンスを至る所で披露し
マイケルの実母であるキャサリン・ジャクソンが
彼の演技を目の当たりにしてコメントした
模倣ではなく体現
というオーラが銀幕から伝わってくる
本作の話題性は彼の熱演があってこそなのは言うまでもない

役者キャリア無し28歳からのこの役作りはヤバい

ジュリアーノ・ヴァルディくんもすごい!

ジャファーの熱演に話題が行きがちだが
少年期のマイケルを演じた子役ジュリアーノ・クルー・ヴァルディ
彼の演技も注目すべきだろう
ジャクソン5時代のマイケルを演じ
彼が【ABC】や【I WANT YOU BACK】を
実際に唄っていたといっても思わず信じてしまう美声と
等身大の子供としての無邪気さと
天才ゆえの孤独から来る寂しさを演じきった
将来有望な少年だ

違和感ゼロ!

名悪役 ジョセフ

コールマン・ドミンゴが演じる父・ジョセフは
絶妙なバランスのキャラだ
彼はマイケルの才能を親という立場を利用して搾取する
現代的な表現で言えば毒親といって差し支えないだろう
劇中のストーリーをなぞれば
超えるべき存在として描かれるのにも納得がいく
少年期のマイケルに虐待をにおわす描写もあり
どうしようもない男に思われがちがだ
彼がモータウンで工場仕事から帰ってくるときのドアの前での溜め息などを見るに
1950年代という世相と味わったと人種差別など想像するに難しくない
そんな彼が現状を打破しようとスパルタ教育になるのは致し方なかったとも思える
そして何よりアーティスト育成の才能は確かであり
ジャクソン一家とマイケルの才能を見出し磨いたのも彼で
単純な悪役と評するのは難しい味わいがある人物だ
現実でのジョセフも、映画本編以上にジャクソン一家の主として
やりたい放題していたように思われるので
挽回の機会はなさそうだが…

選択肢が無かったのは事実

実は2026年にもう一人どうしようもない毒親が描かれる作品がある
それは極東の地、日本のアニメ映画で描かれるある母親の事である
詳しくは↓

『超かぐや姫!』感想【ネタバレあり】歪んだ家族描写と圧巻ライブが共存する異色アニメ
公開日  2026年12月19日上映時間 123分監督   山下清悟脚本   夏生さえりキャスト 夏吉ゆうこ 永瀬アンナ 早見沙織 庄司更紗 入野自由 小林親弘今より少しだけ先の未来。都内の進学校に通う17歳の女子高生・酒寄彩葉は、バイトと…

推しのメイキング BEAT IT

マイケルの代表作の一つ【BEAT IT】
カラーギャングが流行っていた80年代前半
マイケルのアイデアで、実際に対立する本物のギャングを参加させて撮影が行われる
誰の指図もうけず公権力にたてつく彼らも
マイケルの圧倒的なオーラに飲まれ
ダンスにのめり込んでいく
曲のグルーブ感も合わさりギャングの風貌とは裏腹に
とても爽やかな一幕だ

現実の撮影では劇中程和気あいあいと始まらず
ロスで対立する2つのストリート・ギャング(CripsとBloods)は
撮影現場で乱闘寸前までヒートアップしている。
しかし、マイケルたちのダンスを見たギャングたちは小競り合いを止め
撮影に協力したそうだ

伝記映画であるという事

伝記映画というのは必ずしも史実に完璧に則って作られるものではない
ミュージシャン伝記映画ブームの火付け役とも言える
ボヘミアンラプソディーも史実とは異なっている部分がある
映画の尺に収めるため、版権の都合など
クォリティや事業としての事情と目的や理由も多岐にわたり
本作も例外ではない、キャストに関しては
マイケルにとって親しい人物であるにも拘らず劇中で登場していない人物がいる
まずマイケルの妹であり、本人も大物アーティストである
ジャネット・ジャクソンと
マイケルのキャリアに大きな影響を与えたアーティスト
ダイアナ・ロス

ジャネットの場合

ジャネットが劇中に登場しなかった事に関しては
マイケルの実姉ラトーヤがインタビューで明確に答えている
「彼女にも出演依頼をしたけれど、丁重にお断りされたんです。
 だから彼女の意思を尊重せざるをえませんでした」

彼女を登場人物として描くための打診はしたが断られたというのが真実だ
何故かという問いに対しては諸説あるが
制作陣のラトーヤを始めとしたジャクソンファミリーに思いがあったように
彼女にも彼女なりの思いがあったのだろう

ダイアナ・ロスの場合

ジャネットとは違い、ダイアナは何と実際に制作されたシーンがあり
それらが会えなくすべてカットになってしまった事を
ダイアナ・ロス役を演じたカット・グレアム女史が自身のSNSにてコメントしている

ネバーランド問題

また、1993年に世界中に衝撃を与えた
マイケルが作った遊園地のような自宅【ネバーランド】で
怒ったとされる数々の疑惑についてだが
本作ではそれらの件について全く触れられていない
これらは制作陣がマイケルのポピュラーなイメージを
商業的な成功の為、より漂白する為に意図的に触れてないと
SNSで揶揄される事もあるが事実はそうではない
法的にネバーランド問題を映像化する事が出来なくなっているのである。
初期の脚本では、ネバーランド問題でマイケルが逮捕されるところから
本編が始まる構造が練られていた
また、ネバーランドに関するシーンも撮影自体はあった事が
弁護士ジョン・ブランカ役のマイルズ・テラーがSNSでコメントしている

筆者としては結果としてたが
上記の要素は無くなった結果
マイケル・ジャクソンと言う存在のスター性を描く作品として
良い塩梅には出来上がったと思っている
登場人物が増えれば物語は時系列を追うだけで断片的になりがちだし
ネバーランド問題に関しては作風自体が大きく異なっていたのは想像に難しくない
限られた制限の中 タイトル通り、ジャクソンファミリーのマイケルから
脱却するサクセスストーリーに舵取りした事は正解と思える。

フークア監督が描きたかった人物

【自分の中の光を放ち続けたい】
頭部に火傷を負ったマイケルは
入院中に他の患者たちを慰問して回り
ジャクソン5のビクトリーツアーに出演する事について
自己の表現で人々に優しさを振りまき照らし続ける光となる意思を語っている。
善性を持ち、強い意志で自分の使命を全うする人物
アントワン・フークア監督の唯一のシリーズ作
イコライザーの主人公・ロバート・マッコール
もそういった使命感を持った人物だ
人々のために立ち上がり、ひたむきに戦い続ける人物
フークア監督はそういった人物を描く時こそ真価を発揮する監督なのだ

マッコールさんホンマ好き

続編で描かれるであろう事

本作マイケルは続編の製作が決定している
続編に関しては本作で敢え無く使えなかったカットを使用して
バッド・ワールド・ツアー以降のマイケルを描くと思われる
これについては配給会社ライオンズゲートの会長
アダム・フォーゲルソンがコメントしており
「前作の撮影時点で、すでに2作目の25%~30%は撮り終えたものと考えています」
とコメントしている
おそらく諸般の事情で使えなかったカットの問題を
クリアして使用すると思われるが
筆者は本作マイケルの単独作品としての仕上がりに満足しており
今後描かれる事象もある程度予測がつくため
非常に複雑な心境だ

とは言え、ジャファーとフークア監督の手腕なら
それらの問題もクリアしてくれるのでは?と期待している側面もある。
いずれにせよ、『Michael/マイケル』の続編は
本編と同じく、注目の一作となるだろう



コメント