ジョン・ウィック:コンセクエンス【ネタバレあり】

★★★★★

公開日  2023年09月22日
上映時間 169分
監督 チャド・スタエルスキ
脚本 シェイ・ハッテン マイケル・フィンチ
キャスト キアヌ・リーヴス ドニー・イェン 真田広之 ローレンス・フィッシュバーン イアン・マクシェーン ランス・レディック
 ビル・スカルスガルド シャミア・アンダーソン

裏社会の掟を破り粛清の包囲網を逃れたジョン・ウィックは
裏社会の頂点に立つ組織・主席連合から自由になるべく立ちあがる。
主席連合の若き高官グラモン侯爵は
これまで聖域としてジョンを守ってきたニューヨークのコンチネンタルホテルを爆破し
ジョンの旧友でもある盲目の暗殺者ケインをジョンのもとへ差し向ける。
そんな中、ジョンが日本の友人シマヅに協力を求めるため
大阪のコンチネンタルホテルに現れる。

映画.comより一部引用

debuwo評価 95点
おすすめ度  (星5)

圧倒的ボリュームで放つ至高の第4作

映画におけるガンアクションに革命をもたらした
ジョン・ウィックシリーズの完結編!
歴代最長の上映時間169分を余すことなくアクション捧げ
俳優陣、音楽、デザイン、全ての要素が超一流!
超弩級の大傑作アクション映画が爆誕した!!

過去作の記事はこちら↓

前作の不満点を解消・改善

まず本作で唸らされたのは
アラビアのロレンスオマージュの場面転換から
颯爽と始まる、ジョンの首長へのお礼参りとも言える襲撃だ
首長に言われるまま、おつかいに向かい、受け身となった
言いなりの犬、ジョンを払拭する反逆の狼煙
前作のカタルシス不足、悶々とした部分をいの一番に消去したこのシーンは
筆者にとって痛快の極みだ

最高にかっこいい「そうでもない」

メイワクカケテスマナイ

細かな描写だが、日本語の演出に関しても前作に比べて
丁寧に描いているとも言えるだろう
前作ではゼロ率いる日本人の殺し屋軍団に殆ど日本人がいなかったが
今作では日本語を話す役者はしっかりと日本語を話せる役者ばかり
例外としてジョンが話すシーンがあるが、これはジョンはそもそも移民系アメリカ人なので
同じ片言でもゼロ[日本人]が話す日本語とは意味合いが異なる

豊富なアクションスタイル

100分以上はアクションシーンではないかと思わせえる本作
大きな戦闘の舞台となる大阪・ベルリン・パリ
一辺倒ではなく、それぞれで特徴的な演出が行われている

特徴的な殺し屋達

弓と身能力の高さを駆使してウェイト差を補い華麗に魅せるリナ・サワヤマ
彼女はアーティストで、アクション映画には今作が初挑戦であり
その堂々とした演技に底知れぬ才能を感じる

ジョンとは若き日の仕事仲間であり、旧友でもあるシマヅ・コウジ
演じるのはハリウッドで最も尊敬されている日本人俳優の一人、真田広之
コンチネンタルホテル・大阪の支配人として
主席連合に臆せず立ち向かう様は、正にサムライ
他の演者と比べてシンプルながらも洗練された動きは見事
アクションだけでなく、心情に基づいて一貫した行動、思想は
こうありたいと思わせる男の色気・魅力で溢れている

大阪でのジョンは新たな試みとして
遂にアクション映画の伝家の宝刀ヌンチャクを手にする
後述する濃厚過ぎるガンアクション等に加え、60を目前にして
ヌンチャクのアクションまでもこなすキアヌの役作りには脱帽

何故か梅田駅周辺に祀られているヌンチャク

大阪で最も特徴的なアクションを魅せたのは
ドニー・イェン演じる盲目の殺し屋ケインだろう
盲目+仕込み杖+麺を啜るシーンは座頭市モチーフなのは言わずもがなだが
ドニー自身の考案で座頭市とは異なるスタイリッシュ且つ現代的なキャラクターになっている
簡易設置型のブザーをブービートラップとする戦法からみてとれるように
盲目の超人ではあるが、決して盲目をものともしない超人ではない
リアリティと虚構の絶妙な塩梅の役作り
本作ではアクションもさることながら
ドニーの演者としてのバランス感覚こそ評価されるべき

1を彷彿とさせるベルリン戦

新たな試みが大阪とは対照的に、過去作へのセルフオマージュを印象付けたのはベルリンだ
Le Castle VaniのBlood CodeをBGMに
踊り狂う人々を群れの中を逃げるキーラとそれを追うジョン
さながら一作目のヨセフを追う様を彷彿とさせる
クラブミュージックに銃声、ネオンノワール際立つカラーバランス
今までのシリーズを追ってきたファンならこれこれ!言いたくなる演出

ちなみに1のBGMはLED Spirals

ベルリンと言えば、天国と地獄のオーナー・キーラだが
ただのデブと思わせておいて異常に強かったのは
実は彼を演じるのは特殊メイクで太っているように見せた
アクション俳優スコッド・アドキンスその人である
あの巨体から繰り出すキレキレの後ろ回し蹴りは流石の一言

てんこ盛り過ぎるパリ戦

大阪、ベルリン戦の時点で並みのアクション映画程の
戦闘シーンを見せている本作、最終決戦の場となるパリでは
落ち着きを見せてくるのかと思ったら全くその逆
さらなる過激なアクションをこれでもかと見せつけてくる!
凱旋門前では行き交う車をアトラクションに殺し屋達との徒手空拳
そして今作でもキアヌが自身のドラテクを披露する
ドリフトしながら殺し屋達をハンドガンで一掃する様は圧巻

続いて室内パートでは
インディーズゲーム【The Hong Kong Massacre】から着想を得た
俯瞰視点からの銃撃戦だ
こちらでは以前からスタエルスキ監督が温めていた演出
散弾銃用の焼夷弾=ドラゴンブレス弾による銃撃戦も併用し
ゲーム的かつ、ジョンウィックのスタイリッシュに仕上がっている
また、1作目のBGM【Shots Fired】が流れるのもたまらない演出だ

普通にプレイすると結構難しい

クライマックスとなるのは階段での戦闘
待ち構えていた殺し屋達と階段を上りながら戦闘を繰り広げる
敵をなぎ倒しながら進むが、不覚を取り階段から叩き落されるジョン
ジョンウィック2で落下した時よりも長く、急な角度の階段に
街灯に叩きつけて落とされるその激しいスタントアクションに固唾を飲んでしまう

何故立ち上がれるのか

驚きの結末とその理由

そして朝焼け、決戦の地にてジョンの決闘が始まる
この決闘でジョンの戦いは決着を迎える
スタエルスキ監督がインタビューでも答えていたが
ジョンを始め、人殺しを生業としてきた人間ばかりだ
そのような者が両手を挙げてハッピーエンドになってはいけない
コンセクエンスに沿ったものでなければならない

そういった意味ではジョンの着地点は納得だが
前作のラストを考えると、ハッピーエンドではないにしても
額縁通りに受け取るのは時期尚早かもしれない…

超一流に集う高級品たち

本シリーズでは毎回マニアを唸らせるレア物、高級品とされる銃が
登場し、シリーズ注目要素の一つとなっている
今作で特に注目されたのはバワリーキングがジョンの為に調達した銃
Taran Tacticalのカスタムガン【PIT VIPER】
本作オリジナルのカスタム銃で
なんと実銃が商品化されている
お値段は約7000$=100万
4~5万でもハンドガンが手に入るのを考えれば
この銃は超高級品と言えるだろう
また、シマヅがジョンに振舞った酒【山崎25年】も驚きの高級品だ
メーカー小売価格は16万円だが
現在の市場価格は160万円
驚きの価格だが、キアヌや真田広之の装備する、嗜む事を考えれば
納得のグレードと言える
彼らには安物は似合わない

この酒をふるまったのがアキラにばれたら…

銃の販売サイトはこちら ※日本から購入できるかは不明…

監督の小道具へのこだわり

スタエルスキ監督はライムスター宇多丸氏のインタビューにて
【PIT VIPER】の制作にあたり、銃器インストラクターのタラン・バトラー氏に

  • 作って欲しいのは只の銃ではなくカタナのような銃
  • カタナとは武士の魂 精神を具現化した武器
    つまり、ジョンの精神を体現したような銃
  • そして、あらゆる苦難を超えて手にする聖剣のような一丁

このような注文を付けて制作したことを語っている

ジョン・ウィックというシリーズは
ガンポルノであり、アクションポルノであり、ドッグポルノである
だからこそ、小道具の細かいディティールやルーツにまで気を配らなければならない

と熱く語っており、その細部へのこだわりは
ジョンウィックが着るスーツの襟の角度から
ビル・スカルスガルドのネクタイに至るまでこだわりがあり
本作がただのドンパチ映画にとどまらない
デザイン性も人気の一つなのも監督のこだわりがあってこそだ

今後のアクション映画に対する指標となる作品

  • アクション映画として高水準且つ、過剰なまでのボリューム
  • コンチネンタルホテルを始めとするスタイリッシュな世界観
  • 銃器、誓印などの小道具に関するディティールのこだわり
  • グルーヴ感満点のBGM

どれをとっても一流の本作は、今後制作される映画が
このクォリティにまで届きうるか一つの基準として君臨する事になるだろう
アクション映画好きなら是非とも一度視聴していただきたい珠玉の作品だ

さらば友よ

シリーズの名脇役であるホテルコンチネンタルのコンシュルジュ、シャロン
哀しい事に本作は彼の遺作となってしまった。
彼を演じるランス・レディックは、ジョン・ウィックシリーズの企画が走り出した際
最初選んだキャストの俳優だ
オファーを持ち込んだ際、一見荒唐無稽に思える本シリーズを
ギリシャ神話に例えて話すスタエルスキ監督に
『このシャロンという役は、ギリシャ神話でいうヤヌスだね』
とすぐさまシャロンという役を理解し、答えた事により彼の出演が決定した
本作では冒頭とラストにヤヌスが映し出されるが
これは監督が彼を弔うために凝らした演出なのは言うまでもない
ジョンウィックの世界観に観客を招待する、始まりを司る存在として
観た者の記憶に残る素晴らしい演技でした

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