ハードコアの夜【ネタバレあり】父が踏み込んだ“知らなくてよかった世界”

★★★★

公開日  1982年4月24日(日本初公開)
上映時間 109分
監督 ポール・シュレイダー
脚本 ポール・シュレイダー

キャスト ジョージ・C・スコット ピーター・ボイル シーズン・ヒューブリー ディック・サージェント イーラー・デイヴィス レオナルド・ゲインズ

公式サイトより引用

debuwo評価 82点
おすすめ度  (星4)

田舎の家具経営者が目にした、都会の深淵

映画『ハードコアの夜』は、信心深い家具工場の経営者ジェイクが
突然失踪した娘を探すところから始まる。
信頼して依頼した探偵マストが掴んだ手がかりは
失踪後に娘が出演した、ポルノ映画のフィルムだった。
いきなり胸が締め付けられる導入だが
後半はLA〜サンフランシスコの夜の街へと観客を引きずり込んでいく。

フィルム止めてクレメンス…

夜の街の“濁ったリアルさ”が刺さる

片田舎の静けさから、打って変わり
風俗街のネオンと不穏な雑踏での捜索
ここの没入感がとにかくすごい。
特にジェイクが足を踏み入れる「ある店」の入り口
インモラルな雰囲気の演出がとにかく強烈で
次にどんなものが映し出されるのか、気になって画面から目が離せない
エキゾチックなデザインと、所々にある意味深な汚れが物語る行為の数々
夜の街の“汚れ”すらも説得力のある美術で描き切っていたのが印象的だった。

この入口ホンマすごい

社会人として優秀でも“家庭”では─

物語が進むにつれ、ジェイクが「娘に何も聞かされていなかった」ことが判明し
彼の家庭での在り方が徐々に明かされていく。
途中共に旅をすることになるニキへの会話から
ろくに相手の意見を聞かないところ、強固な宗教観が見て取れ
娘との会話はおろか、妻とのコミュニケーションすら希薄だった事は察するに余りある。
立派な社会人であっても
“良い父”“良い夫”であったかという問いに答えられない人物像が浮かび上がる。
作品全体が、**父親という立場の“限界”や“盲点”**に切り込んでいるように感じた

ブラクラのレヴィも似たようなこと言ってたよね…

ニキの帰れなさ マストの有能さ

後半で行動を共にする女性・ニキ。
彼女と探偵マストのやり取りには
救いのなさが滲み出ていて心に残った。
まるで『ブラックラグーン』のロアナプラの住人のように
「普通に生きることが許されない」背景がある人物像。

こんな美人すらストリップ嬢という闇

そして探偵マストは、人間的にはだいぶアレでも、職務遂行の腕前は一級品。

  • 手掛かり無しから娘の出演作を手に入れる
  • 警察がつかんだ他の資料も入手済み
  • ジェイクの弟からの依頼を受ける感情優先で動かないプロ感
  • ジェイクの行動を予測し警察を呼びつける
  • うますぎる射撃

金儲けのために敢えて操作を引き延ばしていたが
確かに仕事はこなしている感じが
“信頼できないけど役に立つ”感が妙にリアル。

クズ≠無能

父と娘の今後ともう一つの親子

終盤、ついにジェイクは暴力の交じった捜索の果てに
思いもよらない場所で娘と再会を果たす

遂に二人は腹を割って話す事になる
誑かされたわけではなく自らの意思で飛び込み
欺瞞と分かっていても悪人に寄りかかっていたクリステン
娘を探し、見る必要がない世界に飛び込み
感情のままに行動するジェイク
痛み、喪失、狂気、希望。
どれもが入り混じっていて、重たいのに最後まで惹きつけられる。

もう一つの拗れた父娘

敬虔な宗教家の父と、距離が離れてしまった娘という意味では
Xファクターシリーズの主人公・マキシーンと父も共通点が多い
ジェイク親子とミンクス親子で何が違っていたのか
それを確かめるうえでもXファクターシリーズはお勧めだ
特に完結編マキシーンは本作からも多く影響を受けているので
是非とも見ていただきたい

俺の名は!

余談ですが、中盤でジェイクが情報収集のために
偽のポルノ男優求人を出して面接に来たアフロ男優が面白すぎでした
マッチョなボディ、ぴちぴちのジーパン、ソウル感じるアフロ
そして開口して一言目が
『俺の名はディッ●ク・ブラック
 ポルノ撮るんだろ?俺で決まりさ』

これは笑うw

この圧よ

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