公開日 2025年6月20日
上映時間 137分
監督 ライアン・クーグラー
脚本 ライアン・クーグラー
キャスト マイケル・B・ジョーダン ジャロン・ブラッドリー レジーナ・キング ウィリアム・ジャクソン・ハーパー アリ・シャカット ブレア・アンダーウッド ラシャーナ・リンチ ラモン・モリス ラキース・スタンフィールド キース・デヴィッド
1930年代の信仰深いアメリカ南部の田舎町。
公式サイトより引用
双子の兄弟スモークとスタックは
かつての故郷で一攫千金の夢を賭けた商売を計画する。
それは、当時禁じられていた酒や音楽をふるまう
この世の欲望を詰め込んだようなダンスホールだった。
オープン初日の夜、多くの客たちが宴に熱狂する
ある招かざる者たちが現れるまでは…。
最高の歓喜は、一瞬にして理不尽な絶望にのみ込まれ
人知を超えた狂乱の幕が開ける。
果たして兄弟は、夜明けまで、生き残ることが出来るのか――。
debuwo評価 68点
おすすめ度 ★★★(星3)
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ジャンル:音楽史×アメリカ近代史×ホラーアクション
1930年代のアメリカ南部、人種差別が色濃く残る街。
黒人のバーを拠点にした仲間たちが、吸血鬼ドラキュラと戦う
──というトンデモ設定ながら
実は音楽史と差別の歴史を映し出す鋭さを持った作品だ。
荒唐無稽な物語が、なぜか心を掴む。
不思議な味わいが残る一本

タイトル「罪人たち」が指すもの
“罪人たち”=sinnersとは誰なのか?
マイケルが演じる双子のことかと思いきや実は
「ブルースミュージックに没頭し、酒場で夜を明かす人々」こそが当時“罪人”とされた存在。
1930年代において、黒人文化の音楽は“悪魔を招く”とされていた。
宗教的価値観が個人の自由を縛っていた時代
──そんな社会の空気がこのタイトルには込められている。

人種差別の描写は重すぎず、鋭い
公共施設での分離政策、堂々と町を歩く排外的組織。
『フルートベール駅で』『黒い司法』など
黒人の立場から社会を切り取ってきたクーグラー×ジョーダンのコンビらしく
差別描写はしっかりと痛みを伴って描かれる。
しかし過剰な説教臭さがないところが絶妙で
「忘れてはならない事実を、娯楽を通じて伝える」バランス感覚が光っている。

音楽演出が歴史とリンクする
ブルースとケルト音楽の融合=ロックの誕生。
吸血鬼・レミックがロックサウンドとともに現れるのは
まさに音楽史の“搾取と再構築”を暗示している。
しかも演出が洒落ていて、かっこいい。
このあたりの演出は、歴史を描きつつもフェアな視点で音楽を扱っていて、とても好感が持てた。
※レミックはアイルランド系移民=アイルランドは小説「吸血鬼ドラキュラ」発祥の地

サミーの演奏シーンは必見
過去から未来の音楽が入り乱れるバーでの演奏シーンは本作のハイライト。
1930年代の酒場にフライングVギターの男が現れ
ラッパーがフロウを刻む…ありえないほど自由で
でも心揺さぶる時間がそこにあった。
サミーの音楽には確かに悪魔を引き付けるほどの魅力があり
説得力のある演出だった

夜の戦いよりも熱い昼の戦い
吸血鬼戦よりも熱かったのが、兄スモーク vsKKKとの戦い
命を賭して立ち向かうその姿はドンパチアクションそのもの
まるで映画『コマンドー』のクライマックスのようだ
あの突き抜けた熱さは、思わず胸が震えた。

お前ら生きてんのかよ!
荒唐無稽な世界観の中でラストの展開は
「いやそこ生きとるんかい!」
とツッコみたくなる驚きの展開。
でも、なぜか許せてしまう。
むしろ「なんか良かったな」で締まる
不思議な多幸感。演出力と役者力のなせる業だった。

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