罪人たち【ネタバレあり】音楽と差別と吸血鬼、1930年代のバーで何が起きた?

★★★

公開日  2025年6月20日
上映時間 137分
監督 ライアン・クーグラー
脚本 ライアン・クーグラー
キャスト マイケル・B・ジョーダン ジャロン・ブラッドリー レジーナ・キング ウィリアム・ジャクソン・ハーパー アリ・シャカット ブレア・アンダーウッド ラシャーナ・リンチ ラモン・モリス ラキース・スタンフィールド キース・デヴィッド

公式サイトより引用

debuwo評価 68点
おすすめ度  (星3)

↓youtubeのレビュー動画

ジャンル:音楽史×アメリカ近代史×ホラーアクション

1930年代のアメリカ南部、人種差別が色濃く残る街。
黒人のバーを拠点にした仲間たちが、吸血鬼ドラキュラと戦う
──というトンデモ設定ながら
実は音楽史と差別の歴史を映し出す鋭さを持った作品だ。
荒唐無稽な物語が、なぜか心を掴む。
不思議な味わいが残る一本

悪くはない

タイトル「罪人たち」が指すもの

“罪人たち”=sinnersとは誰なのか?
マイケルが演じる双子のことかと思いきや実は
「ブルースミュージックに没頭し、酒場で夜を明かす人々」こそが当時“罪人”とされた存在。
1930年代において、黒人文化の音楽は“悪魔を招く”とされていた。
宗教的価値観が個人の自由を縛っていた時代
──そんな社会の空気がこのタイトルには込められている。

人種差別の描写は重すぎず、鋭い

公共施設での分離政策、堂々と町を歩く排外的組織。
『フルートベール駅で』『黒い司法』など
黒人の立場から社会を切り取ってきたクーグラー×ジョーダンのコンビらしく
差別描写はしっかりと痛みを伴って描かれる。
しかし過剰な説教臭さがないところが絶妙で
「忘れてはならない事実を、娯楽を通じて伝える」バランス感覚が光っている。

映画「黒い司法0%からの奇跡」

音楽演出が歴史とリンクする

ブルースとケルト音楽の融合=ロックの誕生。
吸血鬼・レミックがロックサウンドとともに現れるのは
まさに音楽史の“搾取と再構築”を暗示している。
しかも演出が洒落ていて、かっこいい。
このあたりの演出は、歴史を描きつつもフェアな視点で音楽を扱っていて、とても好感が持てた。
※レミックはアイルランド系移民=アイルランドは小説「吸血鬼ドラキュラ」発祥の地

劇中のドラキュラが結構エンジョイしてるの笑う

サミーの演奏シーンは必見

過去から未来の音楽が入り乱れるバーでの演奏シーンは本作のハイライト。
1930年代の酒場にフライングVギターの男が現れ
ラッパーがフロウを刻む…ありえないほど自由で
でも心揺さぶる時間がそこにあった。
サミーの音楽には確かに悪魔を引き付けるほどの魅力があり
説得力のある演出だった

フライングVが見えた瞬間度肝抜きました

夜の戦いよりも熱い昼の戦い

吸血鬼戦よりも熱かったのが、兄スモーク vsKKKとの戦い
命を賭して立ち向かうその姿はドンパチアクションそのもの
まるで映画『コマンドー』のクライマックスのようだ
あの突き抜けた熱さは、思わず胸が震えた。

葛藤がない分糞強いスモークニキ

お前ら生きてんのかよ!

荒唐無稽な世界観の中でラストの展開は
「いやそこ生きとるんかい!」
とツッコみたくなる驚きの展開。
でも、なぜか許せてしまう。
むしろ「なんか良かったな」で締まる
不思議な多幸感。演出力と役者力のなせる業だった。

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