泣いたり笑ったり【ネタバレあり】

★★★

公開日  2022年12月2日
上映時間 100分
監督 シモーネ・ゴダノ
脚本 ジュリア・スタイガーバルト
キャスト アレッサンドロ・ガスマン ジャスミン・トリンカ ファブリッツィオ・ベンティボリオ フィリッポ・シッキターノ

バカンスを過ごすため南イタリアの港町ガエータの別荘を訪れたのは
快楽的に人生を享受する裕福なカステルヴェッキオ家と
代々漁師の労働者階級のぺターニャ家。
価値観や家族観もまるで対照的な2つの家族を待ち受けていたのは
両家の父親トニとカルロの再婚の知らせだった。
父親にひとかたならぬ思いを抱く、双方の家族は大混乱!
元恋人や娘、息子たち、果ては両家の孫まで巻き込んで
バカンスは予測不能な大騒動に。果たして両家の諍い
トニとカルロの恋の行方は――。

公式サイトより引用

debuwo評価 73点
おすすめ度  (星3)

中年と老人 男同士の結婚!?

50代男性と70代男性の同性婚と
それに向き合う周囲の人々の葛藤と絆を描く
コメディ寄りのファミリー映画
テーマがテーマだけに敬遠されるかもしれないが
カルロとトニの対照的な二人の恋愛と
それに振り回される家族たちのひと夏の思い出は
とても爽やかで魅力的だ

カルロ(左)とトニ(右)が結婚します

実際のイタリアでの同性婚について

イタリアでは2016年5月11日では
同性カップルに結婚に準じた権利を認める「シビル・ユニオン」の合法化法が下院で可決した。

同性婚が及ぼす家族への影響

現在では法的に認める国家増えたが
同性婚に対する風当たりは厳しい
他人ならば許容する事が出来ても
自分の家族が同性婚をするとすれば
多くの人間がサンドロと同じようなリアクションになるだろう
この映画は、その部分を偽ることなく、しかし過剰にもせず
しっかりと表現している

自分の父親が再婚しかも初老の男と…

父に愛された息子サンドロ

多くの視聴者の代弁者であるカルロの息子サンドロ
彼は最初こそ同性婚を全否定するものの
少しずつではあるが父・カルロに歩み寄り
最終的には二人の愛を応援するまではいかないものの
二人の関係を認めるまでになっており
劇中で彼が如何に父の事を尊敬し
親子として互いに愛しているかがわかる
筆者はカルロとサンドロの親子愛こそ
この作品でも特に美しい愛とみていた

愛に飢えた娘 ペネロペ

ぺターニャ親子とは対照的に描かれるのは
カステルヴェッキオ家のトニと娘ペネロペだ
サンドロと同じく二人の結婚に大反対だったペネロペ
建前では同性婚なんて!という体裁で切り込んでいたが
その実、自由奔放で身勝手な父に愛されたかった彼女は
他の人間が爽やかであったり、浮世離れしたりしている中で
この作品のリアルな部分を担っていたと言える
ともすれば生々しさまで兼ね備えた劇中の彼女は
どこまでも人間らしく魅力的だ

人が人を愛するという事は止められないが…

パンフレットの監督インタビューにあるように
愛する事、今まさにそうした経験をしている人達を
誰にも邪魔することはできないが
愛を貫くにおいて、清算しないといけない事
立ち振る舞いを変えないといけない事も時には存在する

終盤のトニのペネロペへの接し方など
一辺倒な同性愛者賛美で終わっていないのがこの映画の素晴らしさだろう

欲を言えば…

港町エガータでのバケーションを舞台にした映画だが
欲を言えばバケーションを終え、結婚した彼らの後日談
日常がもう少し見てみたかった
家族を愛するトニ、ディエゴとエロディのこれから
ジャンルコーネは普段何をしているのかなど
魅力的な人物の掘り下げが
もう一声欲しかった…!

コメント